case report: 薬剤師が積極的に薬学的介入を行った事例

杉山薬局では、勉強会の中で症例報告: ケースレポート(case report) を行っています。症例報告から、新しい発見や知識を発表することで、医学・薬学知識を向上させます。また、症例報告を論文形式にまとめ、「症例報告論文」としてジャーナルに投稿しています。今回、杉山薬局小郡店の症例報告が科学雑誌「clinical case reports」に掲載されました。

精神科調剤薬局における薬剤師の介入事例
―性機能障害を訴える統合失調症患者―

杉山薬局小郡店では、薬剤師による薬学的介入によって、統合失調症患者でみられた性機能障害を改善させることができました。これまでにこのような介入事例の報告はなく、本事例は、調剤薬局の薬剤師が処方提案や副作用確認などの薬学的介入を積極的に行うことの重要性を示唆しています。

背景

抗精神病薬による性機能障害は発現しやすい副作用の一つであり、コンプライアンスの悪化や日常生活に支障をきたす場合があり、性機能障害を早期発見し改善させることは患者さんの健康状態、自信、威厳の回復につながります。一方で、患者さんはこのような性的問題を医師と共有することを避ける傾向にあります。従って、調剤薬局の薬剤師が性機能障害を聞き取り、介入することは非常に効果的です。しかしながら、これまでにそのような介入事例はありませんでした。

事例

今回、性機能障害を訴えた統合失調症患者は、抗精神病薬のハロペリドール, リスペリドン、糖尿病薬のメトホルミン, グリクラジド, アログリプチンを服用していました。担当薬剤師は、服薬指導の際に、患者から副作用の症状などを詳細に確認したところ、性機能障害の症状が現れていました。服用薬から抗精神病薬によって誘発された可能性が高いと判断し、抗精神病薬の減薬および性機能障害発症のリスクの低い薬剤のアリピプラゾールへの処方変更を医師に提案しました。その結果、患者さんの勃起不全や射精障害などの性機能障害が著しく改善しました。

成果・結論

患者が自身の性機能障害の内容について医師に伝えるのは簡単なことではありません。さらに医師が診療中に全ての症状を聞き出すことは困難です。本事例は、薬剤師が日々の業務の中で、抗精神病薬の副作用を詳細に確認したことで、医師に話せていなかった副作用を発見することができました。薬剤師による医師への副作用報告や処方提案などの薬学的介入は、薬物療法において重要な課題です。本事例のように、薬剤師が積極的に医師と患者さんの橋渡しとなることは、最適な薬物療法やコンプライアンスを維持するために必要不可欠であると考えられます。

本事例は科学雑誌「clinical case reports」に掲載されています。
Clinical case reports.2021;9:2074-2076. doi: 10.1002/ccr3.3946.

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